技術ラボ便り

吸水速乾試験について

東日本大震災以降は各地で節電が叫ばれ、以前に増してクールビズファッションが注目されています。服装の軽装化や冷感素材など、様々なクールビズファッションが提案されていますが、高温多湿の日本の夏を快適に乗り切るためには、特に汗や湿気対策が必要不可欠です。汗や湿気によるベタつきなどの不快感を解消するため、水分を素早く吸収・発散させる吸水速乾機能を付与した肌着やスポーツウェアー等が市場に数多く出回っています。このような製品の水分の吸収しやすさと、発散の速度を調べる試験が吸水速乾試験です。

◎試験方法

方法:JIS L 1907 繊維製品の吸水性試験方法

   拡散性残留水分率

<吸水性>

滴下法…   水を生地に一滴滴下し、水が生地に吸収されるまでの時間を測定します。

バイレック法…細長く切った生地を吊るして、下端を水に浸します。10分後、水が生地を上昇した距離を測定します。

<拡散性残留水分率>

生地の裏面中央に水を0.3ml滴下します。5分毎に生地の重量を測定し、蒸発されず生地に残っている水の量(拡散性残留水分率)を算出します。

  拡散性残留水分率(%)=(任意の時間の水分量(g)/測定開始時の水分量(g))×100

〈結果例〉
〈試験機〉

◎代表的な基準値

拡散性残留水分率が10%に至るまでの時間

織物:65分以下/編物:75分以下

◎代表的な加工方法

  繊維製品に吸水速乾加工を行うには、主に下のような方法が用いられます。

・繊維の断面を異形断面するなど、繊維の表面積を増やし、毛管現象により水を素早く拡散させ、蒸発しやすくする。

・吸水性に優れた親水性繊維と速乾性に優れた疎水性繊維を組み合わせて糸や生地を作る。

異形断面繊維(電子顕微鏡写真)

◎この機能のデメリット

 ・水や汗と同様に、液体状の汚れが付着した場合もすぐに生地に吸収され、汚れが広範囲に広がりやすくなる。

 ・異形断面繊維の場合、繊維同士が引っかかりやすく、ピルになりやすい。

・吸水速乾生地に柔軟剤を使用すると、繊維表面に柔軟剤が付着し、吸水性が低下する恐れがある。

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