技術ラボ便り

梅雨の季節、高温多湿の環境では一般に菌の増殖が活発になります。近年では菌類による不快臭を解消、清潔感をアピールするため、菌の増殖を抑える機能を付与した製品が注目されています。繊維製品では寝具、下着、靴下、バス・トイレ用品のみならずカーペット類や衣類全般に応用されています。これら繊維製品の菌増殖を抑制する性能を調べる試験が抗菌性試験です。

◎試験方法
方法:JIS L 1902 繊維製品の抗菌性試験方法および抗菌効果

<菌液吸収法・・・定量試験>
試料0.4gを瓶に入れ、試験菌液を0.2 mlを接種した直後に、生理食塩水20mlを加えて菌を洗いだしたものと、37±2℃で18±1時間培養した後、菌を洗い出したもの用意します。そして、混釈平板培養法の場合それぞれの液中の生菌数をカウントします。
これらの生菌数から、試料自体に菌が付着した場合、どの程度菌の繁殖を抑える事が出来るか、を静菌活性値又は殺菌活性値で評価します。これらの数値は、基本的には数値が高いほど効果が高いことを意味します。

静菌活性値 = (logB−logA)−(logD−logC)
殺菌活性値 = logA−logD

A:標準布での接種直後の生菌数、B:標準布での培養後の生菌数
C:加工試料での接種直後の生菌数、D:加工試料での培養後の生菌数

*なぜ「log」を用いるか?・・・「log」と呼ばれる関数を用いると、とても大きな数を小さな数で考えることができます。また、菌数を数える場合には、10倍100倍の単位で増減をカウントします。例えば「接種直後に1000000000匹いた菌が、培養後100000000匹となった」とします。そうすると、この数字を見てパッと考えても、数値が大きすぎてわかりにくいです。しかし、これにlogを使用すると、「接種直後に9(=log1000000000)いた菌が、培養後8(=log100000000)となった」となり、数値として判り易く確認することができます。

<ハロー法・・・定性試験>
 試験片(直径28 mm等)を混釈平板培地の中央に置き、37±2℃で24〜48時間培養します。その後、試験片の周囲にできたハロー(細菌の発育がない透明な部分)の幅を測定し、ハローの有無を判定します(試料3個以上)。

◎代表的な基準値
抗菌防臭加工(定量): 静菌活性値 ≧ 2.2
制菌加工(定量): 殺菌活性値 ≧ 0
ハローの有無(定性): ハローが確認されること

◎代表的な加工剤
・金属系抗菌剤: 銀・銅・亜鉛などの金属、金属塩
・有機系抗菌剤: 第4級アンモニウム塩、フェノール、界面活性剤、カルボン酸、
アルコール、ビグアナイド、カーバニリド等
・抗菌性天然物: 植物系はヒノキ、孟宗竹からの抽出物、動物系では甲殻のキチン・
キトサン等が、よく用いられます。

◎この機能の注意点
・金属・金属塩は他染料・加工剤との反応により、染料と色の異なる金属錯体となり汚染を発生する危険があります(特に銅の場合)。
・光触媒は、長期的に生地や染料の劣化を早める可能性があります。

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