技術ラボ便り

【Q.基準値はどのように決められているのでしょうか?】

 当センターは各社が決めた基準書を基に試験を行い、証明書を発行しています。その基準書には、試験方法や基準値が決められており、アイテムや素材等によっては行う試験や基準値が異なっています。しかし、各社販売している製品やアイテムによって多少異なるものの、比較的似た数値となっています。

それでは、それらの基準値はどのように決められているのでしょうか?実際のところは、生地を製造するための技術面やコスト面、さらにクレームになる確率等を考慮して経験的に見出された数値となっています。品質面からすると、どのような試験を行っても変色せず、他の衣料品を汚染せず、破れなく毛玉もまったくできない生地が一番の理想かもしれません。しかし、そのような生地は存在せず、バラエティに富んだ生地や製品を作るためには、有る程度の冒険をしなければいけません。また、お金を掛ければ、品質のよい生地はいくらでも作ることは可能です。しかし、そうはいってられなく、試験費用も嵩んでしまうため、いくつかの試験を絞り込んで行い、それらの結果をもとにリスク管理をしています。

下記の表に、一般的な試験項目とケケンの基準値、またその基準値がどの程度の数値かを表した表を載せておきます。この表の内容については、こじつけと感じる箇所も有るかとは思います。初めに記載させていただきました様に、基準値は生地を製造するための技術面やコスト面、さらにクレームになる確率等を考慮して経験的に見出された数値が前提となります。基本的には、各社ともにお客様へ最終製品が渡った時に、苦情が発生しないように品質を管理することが一番となります。日本の消費者は世界一厳しい品質を求めることで有名です。ただ、生地の風合いや素材によってはどうしても基準値を満たすことが出来ない生地もあります。そういった場合は、基準値にとらわれず、よりよい商品が流通できるようにすることも必要と思われます。

図1.各試験項目の基準値、使用状況例     

試験項目 基準値 各試験項目の状況例
耐光
JIS L 0842第三露光法
毛 4級以上(淡色3級以上)
その他 3級以上
文献例:4級照射で、春9日間、夏7日間、秋8日間、冬11日間程度の日差し。3級照射で前述の約半分の期間。
水 JIS L 0846 変退色 4級以上
汚染 3級以上
人が衣類を着用した時に、雨や汗でびっしょり濡れた状態で、1日着用した程度。
汗 JIS L 0848
摩擦 JIS L 0849 乾燥 4級以上
湿潤2-3級以上
鞄を肩にかけて、約1日着用した時にジャケットからインナーに色移りが発生する程度。
ドライクリーニング
JIS L 0860 A法
変退色 4級以上
汚染 3級以上
一般的なドライクリーニングを4〜5回行った程度。
引張強さ 200N以上 平均的な小学生高学年(約40kgf)が、両手(片手約5cm巾)で生地を掴んでぶら下がる程度。
引裂強さ 9.8N以上 切れ目を入れた時に、人の手で簡単に引き裂ける程度。
滑脱抵抗力 薄地 3mm以上
厚地 5mm以上
タイトなパンツを着用し、しゃがんで膝に力が掛った時に、縫い目の開きが分かるか分からないか程度。
ピリング 3.0級以上 生地同士を手で擦り合わせた時に、毛羽立ちやピルが発生する程度。
スナッグ 3.0級以上 鋭利な物(ピンセット等)で引っ掻いた時にスナッグが発生する程度。
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