技術ラボ便り
Q.基準値が悪かった場合、どのようなクレームが発生しますか?
前回このコーナーで述べさせていただきましたが、基準値に達しないからといって必ずクレームになるとは限りません。また、各項目で結果が悪かった場合でも、発生しうる事例はもちろん複数あります。その中でも、一般的な事例をいくつか紹介させていただきます。実際に同じようなクレームが発生した場合、その事例に係る項目が過去に証明書で確認できるのであれば、一度見てみてはいかがでしょうか?
図1.各試験項目の基準値と事例
試験項目 | ケケン基準値 | 各試験項目の状況例 |
耐光 JIS L 0842 第三露光法 |
毛 4級以上 (淡色 3級以上) その他 3級以上 |
・天日干や店頭ディスプレイ時に光にさらされることにより変退色する(特に生成り、淡色のものは注意が必要。また、毛、絹、ナイロン製品等は日光により黄変する)・炎天下で長時間着用することにより変退色が発生 |
汗 JIS L 0848 |
変退色 4級以上 汚染 3級以上 |
・脇の下や首、ポケット口等、汗の付着しやすい箇所に変退色が生じる・汗により濃色部から淡色部への色泣きが生じる |
汗耐光 JIS L 0888 |
変退色 3級以上 | ・炎天下で汗をかいた状態で着用し続けたことにより変退色が生じる・ポケット口等に汗をかいた手や汗を拭いたハンカチから汗が付着し、変色が生じる |
摩擦 JIS L 0849?形 |
乾燥 4級以上 湿潤 2-3級以上 |
・着用時や洗濯時の摩擦により顔料プリントが 脱落する・未固着染料が摩擦で脱落し、鞄や家具、他の衣服等を汚染する・起毛、カットパイルは摩擦抵抗性が大きいため、鞄や家具、他の衣服等を汚染しやすい |
引張強さ JIS L 1096A法 |
196N以上 | ・アンゴラやキャメル等の細く弱い繊維やレーヨン、アセテート等の強度が弱い繊維は、着用時に無理な力が加わることにより破れることがある・起毛加工をしてあるジャケットで、起毛によりヨコ糸が弱くなり、破れが起こる |
磨耗強さ JIS L 1096E法 |
毛・絹(E法) 10000回以上 (スーツ20000回以上) その他(A-1法) 100回以上 |
・内股やズボンの裾等、着用時に磨耗を受ける可能性のある箇所に擦り切れや穴あきが生じる・強度の弱い糸を柄糸に使用した場合、着用や洗濯により柄糸部分のみに擦り切れ、毛羽立ちが生じる・着用や洗濯時の磨耗によりリバースが生じる |
パイル保持 JIS L 1076 A法 |
60%以上 | ・コール天やモール糸を使用し、特に裏地の無い製品を裏から摩擦した際に、その部分のパイルが脱落する |
破裂強さ (ニットに適用) JIS L 1096 A法 |
300kpa 以上 | ・アンゴラやキャメル等の細く弱い繊維やレーヨン、アセテート等の強度が弱い繊維は、着用時に無理な力が加わることにより編地が破裂することがある・糸の伸びが少ない編地は、着用時の編地の変形に耐えられず、破裂することがある |