技術ラボ便り

Q.アゾ染料の試験について教えて下さい。

①ここ最近、特定芳香族アミン類の試験についての問い合わせが増えています。そのため、このコーナーで全三回にわたり説明をさせていただきます。まず、第一回目は、「アゾ染料を取り巻く状況」について説明させていただきます。

【自主基準の公表について】

繊維製品などの有害物質の規制として、日本では「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」を代表に、消費者の安心・安全の保護のために規制や基準があります。一方、諸外国においては日本以上の規制・基準を設けている国も多く存在し、安心・安全に関心が高くなっている中、平成24年3月29日本繊維産業連盟が「繊維製品に係る有害物質の不使用に関する自主基準」を公表されました。これは、「アゾ染料・顔料が分解し、発がん性が疑われる物質が検出される染料は使用してはいけない」といった内容となります。

【アゾ染料について】

少し複雑な話ですが、今回アゾ染料自身が規制されているわけではありません。アゾ染料は世の中に多く出回っておりその全てが規制の対象となるわけではなく、その中でも何らかの影響を受けた際に発がん性が疑われる物質22種類が確認される恐れのある染料の使用を規制する内容になります。全染料中アゾ染料は約80%程度使用されており、その中でも約2〜3%程度が今回の規制の対象となります。

【不使用の管理について】

 自主基準の中では、①不使用宣言書、②分析証明書の2つの方法で不使用の管理を行うこととしています。日本国内では、禁止の物質が確認される染料の使用はほぼないとされており、不使用宣言書も比較的容易に入手できる状況となっています。しかし、海外で染色されたものや生地問屋で購入したものについては、不使用宣言書がなかなか入手困難な生地であったり、物理的に入手が不可能な生地もでてきてしまいます。その場合、製品や生地で試験を行い、確認をしなければいけません。

【試験の運用について】

 製品や生地で試験を行う場合、欧州で決められている規格EN14362に則り試験を行い、禁止の物質22種類が検出されるかどうか確認を行います。試験を行った場合、各物質毎に30mg/kgを基準にそれ以上で検出されるようであれば、禁止の物質が検出される恐れがある染料が使用されている可能性があります。

表1.今回規制となる発がん性が疑われる物質一覧

Cas 物質名 Cas 物質名 Cas 物質名
92-67-1 ビフェニル-4-イルアミン 615-05-4 4-メトキシ-m-フェニレンジアミン 101-14-4 4,4’-メチレン-ビス-(2-クロロアニリン)
92-87-5 ベンジジン 101-77-9 4,4’-ジアミノジフェニルメタン 101-80-4 4,4’-オキシジアニリン
95-69-2 4-クロロ-o-トルイジン 91-94-1 3,3’-ジクロロベンジジン 139-65-1 4,4’-チオジアニリン
91-59-8 2-ナフチルアミン 119-90-4 3,3’-ジメトキシベンジジン 95-53-4 o-トルイジン
97-56-3 o-アミノアゾトルエン 119-93-7 3,3’-ジメチルベンジジン 95-80-7 4-メチル-m-フェニレンジアミン
99-55-8 5-ニトロ-o-トルイジン 838-88-0 4,4’-メチレンジ-o-トルイジン 137-17-7 2,4,5-トリメチルアニリン
106-47-8 4-クロロアニリン 120-71-8 6-メトキシ-m-トルイジン 90-04-0 o-アニシジン
60-09-3 4-アミノアゾベンゼン  
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