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アンゴララビット視察レポート

 アンゴララビットの生産現場の調査のために、2015年4月23日から25日にかけて、アンゴラの飼育場や整毛(*1)工場を視察しました。

 今回訪問したのは、中国山東省臨沂市近くの蒙陰県に位置するアンゴラ飼育場です。臨沂市までは北京から飛行機1時間弱の距離です。そこからさらに1時間半ほど車で移動した場所にアンゴラの飼育場がありました。
この場所は少し高台にあり、周りは山と畑といった田舎の風景でした。また、気温も熱くもなく寒くもない状態で、半そでの上着でちょうど良い感じでした。

(*1)整毛 … 産毛とヘヤーが混在している原毛から産毛を取り出したもの。この作業を行う工程を整毛工程という。

飼育場

 アンゴラは、1匹ずつケージに入れられ飼育されており、その数が1列あたり100箱余りでこれが5、6列並んでいました。
アンゴラ以外にも、チンチラ、レッキスなどの種が数匹飼育されていましたが、これらの種は、主にアンゴラの赤ちゃんに与える乳を供給するために飼育しているとのことでした。

コンクリートで囲まれた4〜5畳程度の部屋で採毛を実施していました。この飼育場のアンゴラについては年5〜6回採毛するとのことです。アンゴラを抱えた職人が巧みに専用のバリカン、毛バサミを駆使しあっという間に1匹の採毛が完了してしまいました。1頭当たり500gほど採毛できるとのことでした。

 また、担当者によると、ここの飼育場をはじめとして、基本的にアンゴラの採毛はこの刈る方法で行うとのことで、私の方から、「抜く方法で採毛はしないのですか?」と質問したところ、
「抜く方法で採毛を行うと長い毛が取れるということが言われているが、

  • きれいな毛が取れない。
  • 個体が傷ついてこれ以後良い毛が取れなくなる。
  • 皮に対しても傷ついてよくない。(商品価値が下がる)
  • 抜かれて痛めたところから感染症になることがあり、他のアンゴラ個体に容易に伝染し全滅する可能性がある。
  • 当局から動物福祉に対する認定を受けており、禁止されている。
  • 取引先と刈毛でないと取引できないという契約を結んでいる。

などのデメリットや理由によりがあり、これらについては致命的な問題にもなりかねないので、一切抜き取る方法は実施していない」ということでした。

アンゴラ採毛映像

採毛の見事な手さばきを見れば、日常この手法がとられているのは明らかで、前記のことを裏付けるのに十分であると感じました。

 この地域では、20年前から貧困から抜け出すために地域でアンゴラ飼育を始め産業としているそうです。したがって、アンゴラのおかげで生活が成り立っているという意識があるため、アンゴラに感謝し大切に扱っているそうです。ただ、国外のアンゴラの需要が減ってきているため、中国国内の内需にシフトしつつあるとのことでした。最後に、アンゴラを抱きかかえて見せてもらいました。やはり毛が長いので一見大きく見えました。

整毛工場

見学したこの工場では、一日に400kgのアンゴラ整毛を生産し出荷しているとのことです。工場の入り口にあるアンゴラの原毛倉庫では原毛が山積みにされており、汚れる箇所や、不純物を手作業で分別します。アンゴラはカシミヤや羊毛と違い原毛での洗いは行わないので、この工程が非常に重要であるとのことです。原毛を見ると、束になって一直線に切られた跡が残っており、刈毛であることは明白でした。

整毛工程ですが、湿度管理された部屋に整毛機が並んでおり、次々と整毛が出来上がっていました。ここの工場では、この整毛工程を10回繰り返すとのことです。出来上がった整毛わたは、平均繊維直径が14ミクロン、繊維長が30〜32mmで太い毛(刺毛)の含有割合が、1000本当たり1本以下とのことです。実際に整毛されたわたを見ると細い毛(産毛)が非常に白く、柔らかく繊細で、申し出のスペックは十分あるとの印象を受けました。持ち帰って、平均繊維直径を測定すると14ミクロン台であり、聞いていた通りでした。

アンゴララビットについて

アンゴラ兎毛は、軽く、温かく、それに加え、毛のスケール(鱗)が平滑性に富んでいるため光沢及びソフト感がある純白な毛素材です。以前より婦人用衣料用等の高級素材として人気があり需要があります。アンゴララビット(以後、アンゴラ)は、日本でも過去に飼育されていた時代があり、1960年代では年間約300tの生産量がありましたが、1970年代にはほとんど飼育されなくなりました。現在の産地は、世界の生産量の9割を占める中国、そのほかは、フランス、チェコなどのヨーロッパや、ごく少量ですが南米のチリでも飼育されているようです。(年間生産量はおよそ4700トン)
 アンゴラは、通常、放牧ではなくケージの中で飼育します。また、その毛は、12〜14ミクロンの細い毛(産毛)と30〜100ミクロンの太い毛(刺毛)で構成されており、3か月で5〜9cm、1年で12〜15cm伸びるといわれています。通常年4回抜け替わる時期があり、採毛はバリカンもしくは毛バサミで刈り取る方法により行います。

 今後引き続き、別の地域での調査も実施し、多角的な情報収集を行い、それらの情報を素早く発信できるよう努めていきます。

この報告に対するお問い合わせ先

〒494−0002
愛知県一宮市篭屋4−14−4
一般財団法人ケケン試験認証センター 獣毛総合研究所 所長 丸茂 征也
電話 0586-45-2631   Eメール marumo@jwif.org

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