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第6回:鑑定の歴史「偽カシミヤ出現の背景と歴史(その1)」

  始めにお断りしておかなければなりませんが、今回以降数回、上記のタイトルでご紹介する内容は、カシミヤ不当表示に関する事実や情報(風評もあったかも知れません)をご紹介して、過去に起こった事柄のおおよその状況を知り、今後の生産、販売、購買の際にお役に立つ一助にしていただくことを目的として書いて参ります。
 したがって特定の集団などを非難誹謗するつもりは全くありません。

 話の内容としては、カシミヤ製品の増量のために様々なものが混ぜられたこと、そこから始めて参ります。
 さて、第3回にご説明しましたが、80年代の中頃、日本を中心に第一次カシミヤ・ブームとなりました。
 当時はまだカシミヤ繊維の偽物としてではなく、製品の増量用として様々なものが混用され始めました。
 前者の意味での偽カシミヤが多く出回り始めた時期は、もう少し後になります。
 当時の原料産出国では、製品への加工技術が遅れていたことから、輸出の大半が原毛、洗上げあるいは整毛後の状態で、特に日本向けに大量に輸出販売されていました。

 増量用として代表されるものは、羊毛屑、アクリル等の繊維類が多くを占め、ハサミなどの鉄製雑貨、水分、土、石などの非繊維も含まれていました。
 また当時の主要産出国では産業投資が盛んになって注目を浴び始め、たまたまカシミヤブームになったこともあって、ビッグ・チャンスあるいは一攫千金を狙い、専門業者以外の人々、これには学生など全くの素人までがおりましたが、こうした人々もこの分野に関わり始めたのがこの頃です。

 当初は商社などの購入業者が、現地の原毛加工会社、あるいは中間業者などから提供された「現荷見本」と称する原毛の試料サンプルを混用率検査用としてケケンに依頼していました。
 日本の厳しい品質基準と高度なカシミヤ鑑定技術は海外でも知られていたため、日本で合格とされた原毛は欧米向けとして高く取引されておりました。
  しかしながら、生産国はこれら欧米などと早急に契約する必要性があったため、検査事業者は結果を早期に出すよう求められておりました。

  当時こうした要求に応えられる検査機関はケケンのみでしたので、3日程度の短納期依頼が殺到しました。
 その検査結果を判断材料として、事業者は購入の可否を判断していましたが、次第に問題が拡大していきました。
 特に重要なこととして、生産や品質の管理を全て生産国サイドに任せていたために、「現荷」と称する製品が原毛と同一のものであるか、実際に開梱してみないと分からないという状況だということでした。

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