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第8回:鑑定の歴史「偽カシミヤの変遷(その1)」

 ケケン試験認証センターにおいて、30年近い、最も経験の深い鑑定担当者(カシミヤ・インスペクター、この資格については後の機会に説明いたします)によると、広い意味の偽カシミヤにも歴史があるようです。
  前回までの話の一部を繰り返すことになりますが、1980年代以前のカシミヤについては、その品質において問題が皆無と言ってよく、その後90年前後の第一次カシミヤ・ブームの時期に、「増量剤(混ぜ物)」として絹、アンゴラ、アクリルなどが使われ、さらにそれ以降羊毛、キャメル、ヤクといったように、カシミヤに比較的類似した獣毛が混用され今日に至っています。
 増量剤の時期には、カシミヤとの差異が明確なものが多く、鑑別に関してほとんど迷うことがありませんでした(このため、今後の説明においてはこれらを除いた狭義の偽物を対象にします)。

 しかし、最近は様々な加工技術の進歩により、非常に手が込んだものが多くなり、その結果、相当な経験者ではないと容易に見分けることが困難な製品が多数見受けらるようになりました。
 こうして、流通・消費に係わられ方々にとって、リスクが高まり頭の痛い問題になっております。

 これは全くの余談ですが、カシミヤに対して偽カシミヤという多種多様にわたる多くの獣毛が使用されてきましたが、カシミヤ自体が別の獣毛の偽物として使用されたことが過去には度々ありました。
 カシミヤ鑑定技術が現在ほど普及していない1980年以前には、白カシミヤをキャメル・カラーに染色し、ビキューナ/グァナコの増量用、あるいは偽ビキューナ/グァナコとして流通しておりました。
 当時は現在のカシミヤとは違って、約13〜14ミクロンと非常に細いものであったことから混用されていても、違和感はなかったためと考えられます。

 さて、偽カシミヤの本論、つまり80年代以降の「本当の偽物」をいくつか紹介たいと思います。
 それらの中には、定義が明確ではなく、あるいは見解が分かれるものもありますので、私の責任で書けるものに限定し、それ以外については項目を挙げるに止めることにいたします。

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