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第3回:鑑定の歴史「第一次カシミヤ・ブーム」

 さて、1980年代後半から90年代前半に、いわゆる「第一次カシミヤ・ブーム」が到来しました。
 この時期、日本はバブルの最盛期で、人々の多くは色々な分野で高級品を求めましたが、カシミヤもこの消費ブームに乗って需要が急増しました。
 丁度この時期に、整毛の技術開発が進んだ結果、カシミヤ原料の大量生産が可能となり、価格が相当安くなったこともブームの要因でした。

 ここで、「整毛」のことについて説明しておきましょう。
 カシミヤの繊維を採取するカシミヤ山羊は、寒冷地あるいは山岳高地に住んでおりますが、このような厳しい自然条件のもとでは、外側のガードヘアー(刺毛=さしげ)と、内側のダウン(うぶ毛)によって、身を守ります。
 そして春になると、うぶ毛が抜け落ちますが、これが高級感あるカシミヤの繊維原料となります。
 春先、うぶ毛が抜け落ちる前に、古くは住民がこれを拾い集めていましたが、現在は牧民が熊手のような器具で山羊の身体から抜き取って採集するのが一般的になっています。
 この行程の後、刺毛とうぶ毛の分離作業が必要で、この作業を整毛と呼んでおります。
 1870年代に英国のドーソン社が、綿花の加工設備に改良を加え、手作業に代わる機械式分離装置を開発し、しばらくの間この技術は独占状態にありましたが、日本及びアメリカにおいてさらに進化したモデルが実現し、利用されるようになりました。
 こうした技術進歩の結果、従来はカシミヤ山羊の腹から喉にかけての柔らかい部分のみから原料が採取されていましたが、新技術採用以降は全身からの採毛が可能になりました。
 現在では、一頭のカシミヤ山羊から150〜250gの原毛、整毛後では80〜120gのカシミヤ原料が採れるようになりました。(文責:鈴木)

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