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第9回:鑑定の歴史「偽カシミヤの変遷(その2)」

(1)ヤク
 ヤクは中国青海省、甘粛省、チベットなど、それ以外にも中央アジアの各国、モンゴル国でも多数飼育されており、主要な輸出先はヨーロッパです。
 色相はカシミヤと同様なホワイト、ブラウンなどですが、ホワイトに関しては頭数も少なく毛質も悪く、衣料品用には適していないということで、現在ホワイトヤクと称するものは、殆どがブラウンヤクをブリーチ加工したものです。
 最近、ブラウンあるいはダーク・ブラウン・カシミヤに何らかのブリーチ加工などの化学処理がなされて、詳細な顕微鏡観察をしても加工痕跡が全く認められない原料も出回っており、染色加工などによってさらに見えにくくなった場合には、カシミヤと判定される可能性も考えられます。
 ケケンでは、こうしたヤクの鑑別に関して、顕微鏡法とともに、新たに開発した質量分析法によりほとんど鑑別可能なことを確認し、顕微鏡法の補完技術として4月からこれを実用化することとしております。

(2)スケールオフ羊毛
 日本、台湾等のメーカーが中国へ進出したことによって、ウールのスケールを擦り潰して取り除く加工技術が伝わり、この技術が一部メーカーでカシミヤとして、あるいはカシミヤの増量用として盛んに使われていました。
 当初、鑑別が難しい場合もありましたが、羊毛特有の特徴は確実に残っていることから、見極めは比較的容易で、日本への流入は阻止できました。

(3)キャメル(ブリーチ加工含む)
現在では種族の違うカシミヤとキャメルの相違は簡単に識別ができますが、まだカシミヤ鑑別試験が一般的ではなかった80年代前後まではカシミヤとキャメルを正確に判別する知識、技術も殆ど無かった時代がありました。
 カシミヤとキャメルは種族も違いますが、繊維形状自体は非常に類似した点が多く認められ、当時の知識では容易に判別できなかったことがありました。
 その後、第一次カシミヤブームになり獣毛鑑別を充実させるため調査、研究を重ねた結果、多種にわたる獣毛の鑑別が可能となりました。
 90年代後半頃までは偽カシミヤとして流通していたと思われますが、ケケンの鑑別でこれを阻止したこと、またその後キャメル自体の需要が増し、価格が高騰したことから、本来の使い方をされることが多くなり、現在では殆ど認められず自然消滅した形となりました。

(4)その他
 以上のほか、綿羊絨、ロシアン・カシミヤ、両性毛などがあげられますが、非常に専門的な議論になりますので、スキップさせていただきます。

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